二十年程前からやっている「レストランごっこ」という図工の課題があります。
新聞紙を丸めて折り紙で包み、おにぎりやハンバーガーやスイーツなどを立体的に本物のように作ります。
メニューやお金、自分で考えた店名を掲げたお店も一人一軒ずつ作り、最後はクラス皆でお店屋さんごっこをして大変盛り上がります。

でもここ数年生徒達の作る食べ物の商品にある変化が起こっています。
何にでもおしゃれな模様の印刷してある色紙を貼り、かわいい市販のポンポンを入れきれいなビーズを乗せて、見栄えの良い作品が即席で出来てしまい面白味に欠けるのです。

最近のクラフトのイベントなどを見ても、短時間で売り物の様に仕上がる物が低料金で体験でき、子供と参加したりもするのですが問題点もあると感じます。
効率を追求し回転良く受講者を入れ換える為に、何かをゼロから生み出す時に必要な、子供が自由に思い巡らせる時間がとられていません。

私の子供時代はおしゃれなデザインの色紙や素材は高価で、自分で手作りするしかありませんでした。
それ由工夫する力が自然と付き、表現する喜びも大きかった気がします。
今の子供達は何でも便利に揃い過ぎて、想像力を鍛える場面が乏しいのではないでしょうか。
与えられた物をただ組み合わせるだけではなく、生みの苦しみも含めた創造性豊かな時間をどう作るか。
想像力とは、頭でイメージするだけにとどまらず手や体も動かして、そこからひらめきが沸くと感じます。
図工に関して言えば、キットに頼りすぎず原点に立ち戻り、感動したものをつたなくとも自由に描く。
色を混ぜる塗りつぶす。
色画用紙を切り貼り組み立てる。
木を切り粘土で形造る。
そんな当たり前の、自分の手を通して生み出されていく自然な工程を辿った先に、それぞれの個性の感じられる線や色や形が作品に反映されていく。
それがいかに尊いことか。
この子供達の無欲で生命力あふれる想いを大切に受け止めたい、そう思います。