子ども達に「アリの巣の想像画」を描かせてみると本当に面白い絵になります。
図鑑にあるような女王アリを描いて、大きな羽や産んだ卵などをリアルに描写する人、巣穴に入ると下駄箱があり、色とりどりの靴が並びアリの足にもカラフルな靴を履かせたり、お風呂で鼻歌を歌う様子などのファンタジーの世界を創り上げる人もいます。
でもなかなか筆が進まない人、アイデアが出る人と出ない人もいます。
それは周りの大人達の言葉がけの量の違いではないかとも思います。
幼児に自由にイメージさせる時、知識も体験もない状態では何の答えも出ないのが普通です。
実際にアリの巣のある場所に連れて行き、甘い物に群がる様子や、一列に並んで水たまりに行き着いた時どうなるか観察する。
時には人を噛むことだってある。
それを図鑑で確かめたり、巣の中の写真を見て驚いたりしながら実体験と知識が重なり合いアリの世界に思い巡らせる。
そんな日々の積み重ねが一人の小さなアイデンティティーを造り上げていきます。

芸術の世界はオリジナリティーが大切で、自由な発想、誰もが思い付かない独創性を重んじます。
だからと言って、
「自由に表現してごらん」
と子どもに丸投げしても何も出てこないことが多いのです。
自由な発想を邪魔するのではと遠慮せず、まずはこちらからどんどんアイデアを提示していくと、最初は真似から始まり、次第に子どもならではの発想が次々と飛び出してきます。
そうなると子どもの独壇場。
大人は到底かないません。
アイディアの豊かさは様々な場面で人生を輝かせるに違いなく、芸術だけが特別に自由な発想が求められる訳ではありません。
1+1=2という決まった答えがある算数のいきつく先には、果てしない広大な宇宙が広がっているのですから。

先の読めない困迷の時代を生き抜く為に必要なのは発想力。
この小さな穴を進んで行くと、地球の裏側のブラジルのアリの巣につながって、同じアメを舐めて一緒に踊ったよ。
っていうのはどう?
などと、子ども達とアイディアを競い合い会話を楽しむ。
そんなたわいもない言葉の一つ一つが、これからの時代を生きるヒントにつながるのではないか、と思うのです。